20240104

 伊那市駅のトイレが改築される。次は地域産材による木造で、男性用・女性用・多目的トイレの3室構造になるそうだ。それは結構なことなのだけど、報道によれば

「おむつ替えなどのための「ベビーシート」も女性用と多目的トイレに設ける」(「長野日報」上伊那版、2023年12月31日付)。

 なんで男性用にはベビーシートを設けないのだろうか。

 長野県の人口が200万人以下になるということで、さかんに「若い女性を県内に引き留めねば(呼ばねば)」と言われているわけだけど(これ自体、人口維持の手段として人をみるようで妙な感じだ)、それはこうした公共空間設計で達成されるものだろうか。女性が暮らしやすい社会は、「男性によるおむつ替えを例外的なものにした状態のまま、女性によるおむつ替えをスムーズにする」ことではつくれないはずだ。

 設計事務所、市役所・市長、市議会、新聞社の、誰も妙だとは思わなかったのかな。未婚で、子育ての非当事者の私でも「ん?」と思うところなのだけれども。

 木で作れば、自動的に人に優しくなるわけではない。われわれ森林・林業研究者は、コンクリートと鉄が国産材に置き換わる(国産材需要が量的に増える)のを何でもありがたがる段階から、そろそろ抜け出るべきだ。どんな、誰のための木造・木質建築物ができるかを問わねばならない。それは林業経済学のつとめだと思う。