必要があって千葉聡『招かれた天敵』(みすず書房、2023)を読んだ。
たった5頭のアフリカマイマイというカタツムリが持ち出された結果、太平洋の諸島に蔓延し、その駆除のために導入された肉食カタツムリ(ヤマヒタチオビ、キブツネジレガイ)が効果をあげず、かわりに各地の在来のカタツムリを次々と絶滅させ、アフリカマイマイ根絶のさらなる切り札として肉食陸生プラナリアのニューギニアヤリガタリクウズムシが(これも効果は疑わしいのに)非公式に移入され、こいつがあらゆるものの隙間に入って蔓延し、ちぎってもちぎれたところから再生して拡散し、人類が薬品・土木・電気による防壁を建設するもむなしく(最後の電気防壁はかなり効果を上げるが、台風によるたった3日の機能停止で破られてしまう)小笠原の父島の在来カタツムリを絶滅させてしまうところは、小川一水のSF小説にありそうな絶望感であった。
「侵入したウズムシは、たちまち増殖拡散し、鳥山半島全域を占拠した。半島内でカタマイマイ類が生息する地点は、半島の付け根から先へと順に塗りつぶされるように消えていった。2017年には、半島内で生きたカタマイマイ類は1頭も見つからなくなり、ついに絶滅したものと判断された。
こうして父島のカタマイマイ類は、野生下にて絶滅した。」
――という書き方とか。わかりますかねこの感じ。『天冥の標』の、太陽系が発する赤外線量が下がった、みたいな「どうするんだよこれから」という感じです。こっちはSFじゃなくて現実の災難なのですが(しかも著者は対策の担当者で、失敗を体験している)。