森林・環境共生学に関連しそうな本を読んで適当に紹介するコーナー
地域衰退
宮﨑雅人
岩波書店〔岩波新書〕、2021

好循環のまちづくり!
枝廣淳子
岩波書店〔岩波新書〕、2021
 『地域衰退』は、信州出身の研究者によるもので、県内の須坂市・王滝村の事例がとりあげられている。ただし、良い例としてではなくて、題名にもあるように「地域がなぜ衰退したのか」という例としてだ。大手電子メーカーの企業城下町で、「城主」がいなくなった例。多くの客を惹きつけたスキー場で、ブームが去ったあとに赤字が膨れ上がってしまった例。これらは特殊な事例ではない。全国どこにでも、似たようなケースがみられる。
 著者は、地域の外にむかって ものやサービスを売る(地域の外からお金を持ってくる)ことが地域の中心になっているところでは、その基盤産業が衰退したときに衰退することが避けられないという。そうした地域はどうするか。地域を「活性化」「創生」しようとする。財源が必要なので、国が用意した事業に乗る。そのためには短期間で計画をまとめねばならないから、その作成を都市部のコンサルタントに外注する。
 国がこれまで、どういう方向に地方自治体を誘導してきたかというと、大規模にする方向だった。市町村を大規模化する。市町村合併である。農業や林業の経営も大規模化する。ここには、規模の小さいものは非効率で、規模が大きくなればより効率的になる、という前提(規模の経済)があった。
 しかし本当だろうか。海外では日本よりもはるかに大きな農業経営があるが、これも苦境にある。そういえば、日本最大の林業経営は国有林だけど、たまった赤字に長年苦しめられていた。
 著者は、「地域衰退を食い止めるために、「規模の経済」を働かせようとするような政策を採るべきではない」「むしろ「小規模」を前提に政策を組み立てていく必要がある」(126~127ページ)という。そのかわりに「範囲の経済」に目を向けるべきだと指摘する。森林でいえば、木材だけでなく様々なものを生産するありかたや、林業と他の産業とを組み合わせた兼業などのありかただろう。
 これは全国一律のものではありえない。どこかの優良事例を真似すればいいというものではないのである。各地域の森林のすがたに沿った、地域ごとの取り組みでつくるものだ。そのときに、森林・環境共生学を学んだ人が、それぞれの地域で力を発揮することが求められるだろう。

 『好循環の……』は、そういう取り組みをするときの考えかたについて解説している。
 ここで言われているのは、「いまある問題を解決するために、何が必要か」という順序(フォーキャスティング)で考えないほうがいい、ということだ。「数年後に、このような地域に住みたい」という将来像を描き、そこに至るために何をしたらいいかを考える(バックキャスティング)。その上で、好循環をつくる(あるいは、悪循環をつくってしまう)要素を発見する。そして全部行政まかせにするのではなくて、地域の人々自身も取り組む。言われてみれば当然のことだが、往々にして忘れられがちなことである。
 この最初の段階が、今の私たちには失われがちだと思う。あなたはどういう未来に住みたいのか。あなたの隣にいる人はどう考えているだろうか。それを交流するところから、森林・環境共生学も始まるような気がする。
戻る
© 2020 三木敦朗