信州大学農学部 森林政策学研究室
オープンキャンパス用解説
書いている人:三木敦朗
最終更新:2024年7月19日
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これは何?
移動式森林内オフィス これは、私(三木)が作った移動オフィス「InaLOG」(いなろぐ)の試作5号です。人が曳いて、快適な気温のところまで移動し、中で作業します。ソーラーパネルを使えば、ノートパソコンくらいなら動かせます。
 使われている木材は、地元・上伊那産のアカマツ材です(地元のラーチアンドパイン有賀製材所が製造)。リアカーは、近所の農産物直売所(産直市場グリーンファーム)で中古を買いました。リアカーのタイヤは、近所の人(筋肉がすごい南箕輪村の村長)にも手伝ってもらって交換しました。
 制作期間は5日くらい、制作費用は6万円くらい(リアカー代含む)です。
 動いているところは、ニュース番組の映像を見て下さい。
なぜ作っ(てしまっ)たの?
  1. この地域では、アカマツの松枯れが進んでいるので、枯れてしまう前に、木材として有効利用しようとしています。そこで、これまでに見たことがないものを作ろうと思いました。
  2. 夏は森林内に、冬は日なた(たとえば収穫が終わった農地とか)に移動すれば、冷暖房の使用量を減らせるかもしれません。もしそうなら、地球温暖化防止に役立ちます。そのために、「本当に冷暖房なしで仕事できるのか」を実験しています。
  3. 森林には様々な機能(多面的機能)がありますが、それを私たちは十分に使えていません。InaLOGのような道具があれば、森林の下が涼しいという機能(快適環境形成機能)が使えます。自然環境への関心が薄い人も、森林に行く機会が増えるでしょう。多くの人が森林に入れば、クマやシカが人里に来るのを防げるかもしれません。
  4. いまの森林政策・制度は、森林から木材を生産すること(物質生産機能)を基本的な目的として作られていて、その他の森林の利用はあまり想定していません。森林の利用方法を増やすためには、どういうふうに政策・制度を工夫すればいいでしょうか。それを考えるきっかけになります(研究が進みます)。
  5. いまの若い人は、コロナ禍の影響で、それまでの「大学生っぽい生活」と文化的に断絶しています。大学は、自分が思いついたことを試してみる場所です(もちろん、倫理的に問題がない範囲でです)。大学の文化を、新しく作り直したい。だから率先して、試したり失敗する姿を見せています
InaLOG 5号までの道のり
企画書 InaLOGは、伊那市の事業「伊那谷フォレストカレッジ」で、参加者と新しい森林の利用方法について議論をする中で思いつきました(2020年)。
 そのときに私(三木)が描いたイメージ図です。企画書には、「「山へ柴刈りに」の文化を新しい形で展開」とか書いてあります。
 言うだけなら簡単なのですが、「実際に作る」となると思いきりが必要です。
 また、イメージ通りのものにならないこともしばしばです。1号は移動が大変で、2号は使っていると気分が悪くなり(換気が不十分だったため)、3号は重すぎ、4号は狭すぎました。でも、そういう経験が重要だと思っています。
 5号にも課題は見つかっていますが、やってみる前から「そんなことは無理だ」とか「意味がない」とか言っていたら、分からなかったことでした。
地域でのプロジェクト
 松本市(市役所)では、市民と森林とのこれからの関係を考える「松本市森林再生市民会議」というものを始めています。私(三木)は、この運営委員会の委員長です。
 いまは「初心者にもおすすめできる森林マップ」を市民・学生と一緒に作っています。みなさんにも、人々と森林との距離をもっと近くするためのイベントを、ぜひ手伝ってほしいです。松本市以外にも、ここ南箕輪村や、隣の伊那市、箕輪町、辰野町 で、これからの森林の新しい利活用にむけた取り組みが始まっています。地域には、やることがいっぱいあります。
 地域の人たちの実践活動に参加することは、私たち自身の学びに とても意味があります。机の上の勉強も大切ですが、地域に出てみると、一筋縄ではいかない問題とか(たとえば、生物多様性保全と、「昨日クマが出た」という住民の焦りとを、どう両立させますか?)、新しい発見があります。信州大学農学部は、南箕輪「村」にあって、机の上から農山村フィールドまでの距離が、全国一ちかい農学部です。
 だから私は、みなさんを地域の活動に引っ張り出そうとします。県外の研究会や調査にも連れて行こうとします(学生と一緒に調査してたら、1年間に2万km=地球半周も自動車を走らせていたことがありました)。もちろん、本もたくさん読んでもらおうとします(たとえばこんな感じ)。
 ここでなら、濃密な学びができると自信をもって言えます。あとは、みなさんがそれを望むだけです。
大学の面白さは、自分でつくるもの
 大学は面白いところです。でも、その面白さは、他人が与えてくれるものではありません。
 面白いことを、自分でつくる。自分ひとりで できないことなら、仲間に手伝ってもらってやる。それができるのが大学です。これは日本国憲法 第23条で保障されている、あなたの権利です。
 信州大学農学部で、新しいことを思いつく訓練をして、面白いことを実行してみませんか。一緒にやりましょう! 待ってます!!


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