2025年2月3日
月刊誌『木材情報』1月号の「国産材製品の輸出拡大に向けた現状と課題を考える」は、ここ10年間で急速に拡大した、日本から外国への木材輸出について、製材会社などが経験を語っています。日本国内むけとは異なる寸法の木材が必要になるだけでなく、海外での用途によっては鋸(のこ)で挽いた跡が残るものが好まれるなど、建築や法律、文化が異なるところへの木材輸出には独特の難しさや工夫があるようです。
2025年2月2日
先週に続いて、「災害時外国人支援サポーター養成講座」(南箕輪村・箕輪町・辰野町)の実践編を受講しました。今回は、「避難してきた日本語を母語としない人たちに、基本的情報やニーズを訊くにはどうしたらよいか」を学びました。通訳ボランティアや、翻訳アプリを通して、避難者役の人に質問してみるという実技もありました。
人々に森林・林業のことを訊ねる(調査する)のには慣れていても、災害時には別の訓練が必要だと痛感しました。避難時に配慮すべき持病があるかを質問しなければ、と考えたところまではよかったのですが、いつも利用している病院があるかを訊き忘れたり。座学に加えて、実習が必要なわけです。
2025年1月31日
今回の「伊那の森連携ミーティング」(
ラーチアンドパインが実施)は、伊那の「野じ庵」の狩猟の話題でした。モンゴルの人々の、家畜で「使わないのは鳴き声だけ」という姿勢に学びながら、食べる肉を狩猟で自給して、革製品を制作しているという話です。
2025年1月28日
月刊誌『林業経済』1月号(77巻10号)の、論文「人工林主伐後の再造林実施に影響を与える要因の検討」(藤掛一郎ほか)は、伐採時に提出する伐採届をもとにアンケートを実施し、再造林する所有者と、しない所有者がいるのはなぜか、ということを明らかにしています。所有面積・伐採面積が小さいと再造林しない傾向があることや、伐採業者に再造林を勧められると再造林率が高まること(しかし、業者から再造林についての話を受けなかった所有者も多くいること)、伐採した森林の価格が適当であったかが分からない所有者が6割いることなど、初めて見るデータでした。
2025年1月26日
「災害時外国人支援サポーター養成講座」(南箕輪村・箕輪町・辰野町)の入門編を受講しました。
私たちが森林のことを研究する目的の一つは、災害を減らすことです。山地災害は、森林の状態を改善するとともに、人々が危ないときに適切に避難することで防げます。どちらが欠けても、研究の目的は達成できません。
地域には、日本語を母語としない人たちが住んでいるので、災害が発生したり、リスクが高まっているときには、わかりやすい表現で伝える必要があります。そのために、どういうことに気をつければよいかを学びました。
2025年1月24日
研究室の3年生が、
南箕輪村議会が開催した「若者議会」(模擬議会)で、「議員」として村長に質問をおこないました。
信州大芝高原の村有林に、学生が関わる機会がないが、この森林を高校や大学が連携して学習する場(プラットフォーム)として活用してはどうか。南箕輪村は、村内に保育園から高校・大学まである珍しい村で、信州大芝高原の広大な平地林も珍しい。これを組み合わせて村独自の取り組みをしてはどうか、という提案です。
そのほか、自動車の使用による温室効果ガス排出を、村としてどのように減らそうと考えているかなどについても質問しました。
質問をおこなうにあたっては、研究室のゼミで「何を質問すべきか」「どのように質問すれば、具体的な答弁が得られるか」「質問を通じて、情報を引き出すにはどうしたらよいか」などを議論しました。
「若者議会」の様子は、『長野日報』の記事になっています(
「20~30代の視点で質問 南箕輪村議会が若者議会」)。
2025年1月24日
昨日に続いて、「省力低コスト造林技術普及シンポジウム」(日本森林技術協会)をオンラインで傍聴しました。パネルディスカッションには、長野県からは
南佐久北部森林組合の報告がありました。植林の前には、伐採時に散らばった枝などを片づける作業(地拵え)が必要になりますが、人力でおこなうと とても労力がかかるので、機械でおこなって省力化し、伐採後かならず再造林している事例です(高原野菜の畑の近くは除いて)。
シンポジウムの全体としては、成長の早い苗木を用いて、植林後の草刈り(下刈り)回数を減らす省力化は必要だけれども、それができる場所を選ぶことが大切だという内容でした。植林木以外の草木(競合植生)は、下刈りの回数や、その土地がかつて何に使われていたかなどによっても異なってくるので、観察が必須なようです。
2025年1月23日
「低コスト再造林プロジェクト最終報告会」(全国森林組合連合会)をオンラインで傍聴しました。国産材を安定的に生産していくためには、条件のよいところでは伐採後に植林(再造林)していく必要がありますが、従来は労力やコストがたくさんかかっていました。これを技術的に圧縮して、着実に再造林していくことが課題になっています。長野県からは
根羽村森林組合の報告がありました。成長の早い品種のスギに加えて、早生種のコウヨウザンを植えた事例です。信州のような冷涼で広葉樹が落葉し、シカの生息密度が高い地域でのコウヨウザンの造林例として貴重です。
報告会の全体としては、間伐を繰り返すと再造林がやりにくくなる、という指摘が興味深いものでした。間伐すれば、森林の中(林床)が明るくなって様々な草や低木が生えてくる。これが生物多様性や山地災害防止の点から望ましいとされてきたわけですが、そうすると伐採後にも様々な植物が生えてくることになり、再造林にとっては草刈り(下刈り)などの手間が増える。低コスト再造林したいのなら、伐採の前には林床が暗くて他の草木はない状態にしたほうがいい、ということになりそうです。でも、それはこれまでの森林づくりの方向性とは異なるものになります。それをどう考えるか。面白い点です。
2025年1月22日
農学部構内で、能登半島の大地震・豪雨による森林への影響についての報告を聞きました。地震による山地崩壊には異なる型があって、その後の森林回復の経路にも違いが予想される(埋土種子による天然更新が期待できるところと、そうでないところがある)というのは、森林政策のうえでも重要な指摘だと思います。
2025年1月17日
inadani sees(伊那市産学官連携拠点施設。農学部の隣)で開催された、「伊那の森連携ミーティング」に参加しました。地域の森林・木材関係者が意見交換をする場として、伊那市の事業の一つとして設けられています(
ラーチアンドパインが実施)。私たちも地域のリアルな課題を勉強する機会として大いに活用しています。
今回は、
島崎山林塾企業組合 と、
つなぐ里山 のかたが、事業体の立場から、林業の面白さや課題を語りました。林業についての自らの考えを語る若い人がいるのは、地域の財産です。
2025年1月17日
経済理論学会の『季刊 経済理論』61巻4号に、三木敦朗「書評 岩佐茂著『マルクスの生活者の思想とアソシエーション』」が掲載されました。
哲学の研究書を、森林・林業研究の視点から論評しました。
2025年1月16日
福島県双葉町の
東日本大震災・原子力災害伝承館で林野庁が展示「福島の森のことを知ろう~森林・林業・森のめぐみと復興~」をしているので見に行きました。
震災遺構・浪江町立請戸小学校や海岸林の造林地も見学しました。
国道6号線を通っていると見えにくいのですが、周囲には今でも帰還困難区域があって、ゲートで封鎖されています。その近傍では生活再建のための除染や工事がおこなわれています。現在のエネルギー構造に依存して生活する私たちが、必ず見ておかねばならない風景だと思います。
2025年1月13日
辰野町で開催された「たつの森の市」に参加しました。昨年つくられた「
未来につなぐ辰野町の森ビジョン」の内容をひろめ、それを実施していくためのイベントです。シンポジウムのほか、食べ物のブースなども出ていました。
森林経営管理法や森林環境譲与税の仕組みができたことで、市町村で「ビジョン」(名前はさまざま)を作る動きがあります。専門家に任せれば「ビジョン」は書けますが、重要なのはその後です。役場や事業者、地域住民・諸団体が、それを実施していかないと意味がありません。どうやって「ビジョン」の内容が当たり前になっていくようにするか。本番はこれからです。
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