2025年6月30日
【紹介】植木達人編『自然力を活かす森づくり 森林機能を高める森づくり』
(長野県林業コンサルタント協会・風來舎、2025)という本が出ました。植木さんは信州大学名誉教授で、一昨年度まで森林施業・経営学研究室を主宰していました。いまの日本林業の多くは、皆伐‐一斉造林(皆伐作業法)ですが、ほんらいは「適地適作業法」であるべきだと指摘する本のようです(これから読みます)。
2025年6月23日
ゼミで、先日公開された最新版『
森林・林業白書』を読んでいます。今年の『白書』は、「生物多様性を高める林業経営と木材利用」を特集としています。生物多様性と林業との関係は、これまでの『白書』でも扱われてきていますが、ここまで大きく取り扱ったのは初めてではないかと思います。毎年ゼミ等で読んでいますが、毎年、新しい発見があります。森林に関わる学部1~2年生なら、少なくとも『白書』のグラフや表を眺めている程度は常識として知っているべきでしょう。
2025年6月22日
講義「信州の防災学」の一環で、能登半島に行き、地震直後に人々がどう行動したのかをうかがいました。お話からは、ふだんからの地域のつながりや災害に対する訓練が、災害時にも意味をもったことが分かります。森林・林業を研究する理由の一つは、自然災害の軽減です。勉強になりました。
2025年5月31日
箕輪町で開催された「気候町民会議 in みのわ」の1日目を傍聴しました。くじで選ばれた住民が、気候変動について学び、我がまち・自分たちではどんな対策ができるのかアイデアを出す会議です。これまで首都圏を中心に25自治体で開催されてきましたが、長野県内では2か所目(松本市の次)、町としては全国で2か所目(神奈川県 二宮町の次)だということで、身近で新しい取り組みが見聞きできるのは素晴らしいことです。
こういう会議で見知らぬ人がのグループディスカッションをすると、話が盛り上がるまでに時間がかかるものですが、箕輪町は最初から予定していたディスカッション時間を過ぎるほどでした。
気候変動(温暖化)は、多くの人が知っているだけでなく、夏の暑さなどで実感できるまでになっています。また、省エネなどによる温室効果ガス排出削減や、再生可能エネルギーへの転換が必要なことも知られています。しかし、それを自分ごととして取り組むという段階では、進みづらいところがあります。気候町民会議で、そこがどう議論されていくか、2日目・3日目も傍聴して学びたいと思います。
箕輪町は、町の建物や駐車場の屋根に太陽光パネルをたくさん置いていて、役場で消費する電力の実に43%をこれで自給しています。
2025年5月30日
ふだんは演習林(手良沢山演習林)で植林や間伐をしている森林生産実践演習で、今日は、原木市場の伊那木材センターと、薪ストーブ販売業者のDLDに見学に行きました。演習ではそのあと構内に戻って、チェンソーの仕組みや動作を学習します。
演習のあと、農学部生協前の広場で2年次生歓迎会をおこないました。森林・環境共生学コースの各研究室が、それぞれ食べるものを出す催しで、毎年恒例です。
2025年5月27日
【紹介】月刊誌『林業経済』5月号(78巻2号)の、論文「地域イノベーションの成功・失敗要因に関する考察」(本田知之ほか)は、林業での新価値創造型のイノベーションは、それを試みる人の林業キャリアの長短が成否を第一に左右する要因であると主張しています。新技術の投入だけでは難しいということです。
挙げられている調査事例がイノベーションかどうかは、少し疑問もあるのですが、生産が質的に新しいものになるのは、生産手段の発達だけで自動的に果たされることはなく、人の側の経験や技術・技能の量的な蓄積が必要である、という点はなるほどそうだろうと思います。
2025年5月25日
【紹介】『
雨を操る:森林保護思想の変遷から読み解く気候安定化への道』(ブレット・M・ベネット、グレゴリー・A・バートン、築地書館、2025)。19世紀には、「森林が失われると、そこの土地に雨が降らなくなる」と考えられていました。気象学や水文学(すいもんがく)の進展によって、それはひとまず否定されるが、現在では「森林が失われると、ほかの土地に雨が降らなくなる」ことが明らかになってきている。そこには、南アジアや南アメリカでの研究が反映されている。この歴史を書いた本です。
ただし、それを読者にスムーズに理解してもらうためには、冒頭で、森林と地下・大気との間の水のやりとりにはどのような経路があるのかを解説する必要があると思います。樹木が吸い上げた水を蒸散するのと、地面から蒸発するのと(林床面蒸発)、降雨が樹冠にキャッチされてそのまま蒸発するのと(遮断蒸発)を合わせて「蒸発散」なのだということが解説されていないと、とくに森林と川の流量の話など、何が議論されてきたのかが分かりにくくなるのではないでしょうか。また、日本語では「林業家」と「森林官」のイメージが異なるので、前者ではなく後者で表記したほうが、植民地支配の中でforesterが果たした役割が明瞭になると思います(もちろん、あえて「林業家」と訳されているのだと思いますが、その意図がよく分かりませんでした)。
火星に「運河」を見たローウェルは、木曽の御嶽山に来たことがあるのですが、その2つの関係を指摘した部分(126ページ)と、ホートンについて述べた部分(174ページ)は、大いに参考になりました。邦題の「雨を操る」は、ジオ・エンジニアリングをちょっと想起させます。著者の意図には反するかもしれませんが、『気候リヴァイアサン』(ジョエル・ウェインライト、ジェフ・マン、堀之内出版、2024)の議論とつなげて読むと、スリリングだなと思います。
2025年5月22日
南箕輪村の都市計画マスタープランの見直しに関するワークショップに参加しました。ハザードマップや、土地利用の種類を色分けした地図を前に、村のすぐれたところと、改善したほうがよいところを参加者で話し合いました。同じ地域内でも、人によって見ているところが微妙に違って面白いです。
ただ、今回でた意見は「成人男性のうち自動車を運転する人」の視点に偏ってしまったと思います。生活圏は、子どもなど自動車に乗れ(ら)ない人では大きく違うし、夜道の不安は女性ではまた異なるものでしょう(それ自体、問題ですが)。マスタープランに、多様な住民の視点が反映されることが必要だと思いました。
2025年5月21日
信州大学農学部の「公開森林実習」のポスターを、全国の大学にお送りしました。これは、他大学の2年生以上の学生を対象にして開催しているものです。
詳しくはこちらをご覧下さい。
このポスター、毎年 当研究室の三木がイラストを描いていますが、いつも仕上がりが不安です。さきほども、チェンソーのスパイクバンパーが逆というミスを発見しました……。生成AIでないことは、右側の人物のイヤリングの柄を見てもらえれば分かると思います。
2025年5月19日
3年生のゼミでは、「地域の新聞から、森林・林業に関係のある記事を選び、読んで、そこから研究の視点を考える」ということをやっています。
今週 扱ったのは、「豊かな自然「十二天の森」活用探る」(『長野日報 上伊那版』5月10日付)。駒ヶ根市の公民館が、市有林「十二天の森」での学習会を開催し、それを通じて活用方法を考えようとしている事例です。この広さの平地林があれば何ができるか、なぜ森林の利活用についての企画を市役所の林務担当ではなくて社会教育課が担当しているのか、などを議論しました。
2025年5月14日
伊那谷フォレストカレッジ協議会が、当初計画していた5年間の実施期間を終えて、さいごの総会をおこないました。ひとまず一区切りです。伊那谷フォレストカレッジは、5年間で約1000人の申し込み者を得て、その中の約200人に受講者してもらいました。このかんに伊那に移住した人は約40人(受講者と、その家族を含む)です。
当研究室の三木は、協議会の委員として関わりました。
この記事にもあるように、協議会が立ち上がったときには、何を目指しているのか理解できなかった、というのが率直なところです(記事中の「何がやりたいのかわからない」というのは私の発言です)。いくらか林業の研究をしてきて、何か分かったような気分になっていたのですが、それが理解を妨げていたのです。「林業」を固定的なものとしてとらえていたのでしょう。
伊那谷フォレストカレッジを通じて、いちばん学んだのは私だろうと思います。林業についての視野が広がり、それを研究にも活かすことができました。実地での取り組みから得るものは大きい。学生に「地域の活動に参加して課題を発見しよう」と言うのは、そういうことからです。
2025年4月28日
「
松本市 森林長期ビジョン GREEN FOREST GREEN LIFE 松本でわたしたちが共につくる森林との未来」が公表されました。これを作成した松本市森林再生市民会議運営委員会は、当研究室の三木が3年間、委員長を務めました。
「本編」に加え、本編の元になったデータも「資料編」にまとめられています。意外なデータもあると思います。これからの森林づくりや、森林のあるまちづくりに活用してください。本編冒頭のメッセージに書いたことを再掲しておきます。
「とはいえ、ここに書いただけでは現実にはなりません。わたしたち市民が、松本市(市役所)や森林・林業の事業者と協力して、松本らしい、森林との関係をつくっていくのはこれからです。令和7年度から新しい取組みが始まります。これにぜひ参加してください。50年後の松本市の森林は、あなたから始まります。」
2025年4月23日
【紹介】『
sees magazine』創刊号は、信州大学農学部の隣にある、伊那市の産官学連携拠点施設「inadani sees」が発行した書籍です。創刊号のテーマは「特集 Rescale ちょうどいい規模、新しいものさし」で、地域や生活、農林水産業のような急に変化できないものと、ビジネスとのちょうどよい規模(スケール)について、様々な実践者にインタビューして考えています。答えは容易には出ないけれども、無限に大きくなろうとする資本主義社会の中で、スケールについて考えることは大切です。考えてみると難しいことを扱っていますが、インタビューが中心なので分かりやすく読めます。
「マガジン」という題名ですが、最初から順番に読んでいったほうが全体が理解しやすいでしょう。
2025年4月14日
3年生むけのゼミが始まりました。最初の数回は、様々な研究室のゼミを見られるように変則的な日程になっています。森林政策学研究室は、4月14日、22日、30日と、5月2日に開催します。
2025年4月9日
「原生林を燃やす日本のバイオマス発電」(
地球・人間環境フォーラム)をオンラインで傍聴しました。
2025年4月8日
1月24日に実施された「若者議会2024!」の記録(録画)が、
南箕輪村議会のウェブページに掲載されています。
2025年4月7日
【紹介】『
自然によりそう地域づくり:自然資本の保全・活用のための協働のプロセスとデザイン』(鎌田磨人ほか編、共立出版、2025)は、研究者など地域外部の専門家が、景観や生物多様性といった、その土地の自然資本を守ろうとするとき、どうすれば地域の人とうまく継続的に取り組めるのかを分析し、手法を示しています。
一般に、成功事例をみるときには、超人的な能力やネットワーク力をもったキーパーソンに注目しがちです。しかし、それだと「うちの地域では(そういう人はいないから)無理だ」となってしまいます。この本では、景観生態学と社会学の視点から、成功事例には成功するだけの「パターン・ランゲージ」があったのだと分析しています。芸術や武道の「かた(型)」のようなものでしょうか。「違いの相互理解:重なりと違いを知ることで、協働しやすくなる」など36のパターン・ランゲージが巻末にまとめられていて、ここだけ読んでもヒントになります。
こうしたまとめ方は、先ごろ出た長野県ゼロカーボン社会共創プラットフォーム「くらしふと信州」のパンフレット『
信州で実現する共創型の脱炭素まちづくり:5つのキーアクション』にも通ずる部分があるなと感じました。
2025年4月4日
山岳圏森林・環境共生学コース、地域協創特別コースに入学したみなさん、おめでとうございます! これから一緒に学んでいきましょう。楽しみにしています。
2025年3月31日
『信濃毎日新聞』の記事「森林の将来像まとめたビジョンに理解を 建築家や林業関係者の団体、松本市でトークイベント」に、当研究室の三木のコメントが掲載されました。
2025年3月31日
【紹介】月刊誌『木材情報』3月号(406号)の赤堀楠雄「多様な広葉樹を活かし、次世代の山づくりに貢献」は、新たに開業した北海道の製材所のルポタージュです。地域の小規模製材所を、新しく始めるというのは珍しい。明瞭な姿勢があって興味深い事例です。広葉樹は最近注目が集まっていて、月刊誌『林業経済』3月号(77巻12号)は、1冊まるまる、シンポジウム「広葉樹 新時代」の記録です。こちらも読みごたえが大きい。
2025年3月23日
信州大学農学部の卒業式でした。学部・大学院を卒業したみなさん、おめでとうございます。森林政策学研究室からも、4人が卒業しました。専攻研究(卒業論文)にあたっては、地域のみなさんにご協力、ご助言いただきました。学生の学習へのご協力、ありがとうございました。
2025年3月21日
今日は「国際森林デー」(
International Day of Forests)です。
後期日程で、山岳圏森林・環境共生学コースに合格したみなさん、おめでとうございます! 4月に会えるのを楽しみにしています。いろいろな経緯でコースに入ることになった人もいると思います。しかし飽きさせませんから、そのつもりで期待していてください。
2025年3月20日
南箕輪村の村政150周年記念植樹祭に参加しました。村有林「大芝高原みんなの森」に、150周年にちなんで150本の木々を村民が植えるという催しです。松枯れ対策など課題はありますが、ますます地域住民が親しむ森林になるといいなと思います。そういう森林を、一緒につくっていきましょう。
2025年3月18日
inadani sees(伊那市産学官連携拠点施設)で開催された「伊那谷の風景シンポジウム 千年つづく風景「私が好きな伊那谷の風景」」(
信州大学社会基盤研究所、
三風の会、三風デザイン)に参加しました。信州大学農学部の周辺は、とてもよい風景があります。それを住んでいる人々じしんが感じているという点が大切です。伊那谷「らしい」風景を選ぶと、地形などの眺めの写真が選ばれるが、伊那谷の「好きな」風景を選ぶと、人が映り込んだ写真が選ばれるのは面白い傾向だと思いました。伊那谷のよい風景の多くは、農林業によって形づくられたものなので、風景の保全のためには農家が経営を続けられる社会環境を作る必要があります。
inadani seesには先週土曜日に
首相も来たそうです。人気施設ですね。
2025年3月17日
【紹介】『自伐型林業:小さな林業の今とこれから』(
自伐型林業推進協議会編、世界書院、2025年)。「間伐を繰り返し、森林を育て、長期的な経営の安定を目指」す「森林の経営や管理、施業を自ら〔……〕が行う、自立・自営型」の「自伐型林業」について、その言葉の発祥から現在の展開までを、当事者が分かりやすくまとめています。経営の基盤となる森林を獲得することや、目標に至るまで長期を要することなど、乗り越えるべき課題も明確にされた本です。
なお、オーストリアの虫害について、それを皆伐による土壌乾燥と関連づけているところには、読む際に注意が必要だと思います。
2025年3月13日
【紹介】『
里山と地域社会の環境史:多摩ニュータウンにおける社会変動と〈根ざしなおし〉』(岡田航、新曜社、2025年)。「里山や農地には、これこれの貴重な機能があるのだから保全せねばならない」というふうに言われることがありますが、この本からは、その土地で生活を営まない研究者が保全を考えることの問題点を知ることができます。そこで生活を営む人々が、社会が変化するなかでも、地域の自然(あるいは地域の人どうし)とどのような関係をつくろうとしているのか。それを捉える必要があるのです。
2025年3月12日
山岳圏森林・環境共生学コースの後期日程の試験を受験したみなさん、お疲れさまでした。家まで気をつけてお戻りください。
2025年3月11日
「森林資源をうまく利用して保全するための途上国での様々な取り組み」(
国際緑化推進センター)をオンラインで傍聴しました。発展途上国で森林減少を防ぐためには、その地域の住民の生計・生活の向上と、森林保全とを組み合わせる仕組みが必要だとされます。その支援のためには、地域コミュニティの生活や農林業のあり方(中心的村落や有力者やだけでなく)、ニーズを調査し、それに合った形で進めることが重要だという指摘でした。日本国内では、森林減少は生じていないので事情は異なりますが、森林を活用して生計・生活を向上させるという点では共通するところがあると思います。
2025年3月11日
東日本大震災によって、私たちは、人間がコントロールしきれない自然現象があるという当然のことを認識するとともに、エネルギー多投型の社会は、どこかの地域にリスクを押しつけることで成立していること、それが人々には見えないようにされていたり、見えても目をそらして生活していること、を知りました。これに対して、山岳圏森林・環境共生学、あるいは大学の地域協創の取り組みが、いったいどういう態度をとるのか。3月11日は、それを考え直す日だと思います。
2025年3月10日
【紹介】月刊誌『山林』2月号(1690号)の「日本型フォレスターができるまで」(田村典江)は、「森林・林業再生プラン」(2009年)以後、紆余曲折を経て「日本型フォレスター」が森林総合監理士という資格になっていった経緯をふり返っています。「森林認証制度が林業労働者の労働安全に与える影響の研究」(滝沢裕子)は、森林認証制度の一つであるFSCの認証を受けたことによって、認証に必要とされるモニタリングなどが労働安全にも作用することを示しています。「きのこの食文化と森林」(齋藤暖生)は、燃料等での里山利用が活発だった地域では、腐生性のきのこの食文化があまりみられないことなど、食文化との関係性を説いています。「近年の事業動向からみる森林組合が果たしている役割と課題」(笹田敬太郎)は、日本の森林管理・林業の大きな部分を担っている森林組合が発展していることに着目しつつ、組合員や行政との関係性が薄れていることを課題として挙げています。
2025年3月9日
登戸研究所平和資料館(駒ヶ根市)開館記念の公開学習会「陸軍登戸研究所の疎開の実態に迫る!:新たな資料、新たな証言から見えてくるものは何か」(登戸研究所調査研究会)に参加しました。
長野県のいくつかの市町村には、アジア太平洋戦争の末期に、日本陸軍の秘密機関である登戸研究所(第九陸軍技術研究所)が疎開していました。駒ヶ根市の中沢地区では、動員された子どもたちが箱状の「缶詰爆弾」を作っていて、その記憶が地区には残っています。戦後80年をむかえ戦争体験のある人が減る中で、それらの記憶をどのように活かし、今後の世代の平和の実現につなげていくかが課題になっていると思います。
2025年3月8日
「「開かれた里山」シンポジウム」(長野県林務部信州の木活用課林業経営支援係)に参加しました。長野県内で、人々を惹きつける里山づくりを実践している団体が、活動の成功のポイントや、乗り越えねばならない課題を発表しました。
①長野県内でも、地域ごとにニーズは異なり、それに合わせて取り組みがされていて、「里山」の内容は多様であること、②また、地域のニーズは「積雪時の倒木を減らしたい」とか「地域の史跡・名所を巡れるようにしたい」「住民に健康になってほしい」などであって、里山の整備は手段であること、を学びました。
2025年3月7日
林業経済学会と
環境社会学会の連携企画「森林空間の訪問利用と地域社会」をオンラインで傍聴しました。森林は、木材やその他の林産物(特用林産物)の生産のほかにも、観光・レクレーション、森林サービス産業にも利用されていて、これには期待もあるし、過去の失敗の歴史もあります。こうした非物質生産的な利用が、地域社会にどのような影響を与えるか、よりよい関係のためには何が必要か、学ぶ機会になりました。
2025年3月6日
前期日程で、山岳圏森林・環境共生学コース、地域協創特別コースに合格したみなさん、おめでとうございます! 4月に会えるのを楽しみにしています。
2025年3月3日
【紹介】月刊誌『林業経済』2月号(77巻11号)の論文「近世前期における幕府の材木需要」(石畑匡基)は、江戸の建設ラッシュと大火によって発生した巨大な木材需要に対し、優良な木材がとれる森林資源が枯渇した地方(高知)と幕府がどのように対応したかを明らかにしています。要求された規格の木材が納入できないときに、寸法の足らない木材を多めに納めて帳尻を合わせる「木廻し」という方法は面白いですね(それで問題が解決したのかが不思議ですが)。
2025年3月2日
inadani sees(伊那市産学官連携拠点施設)で開催された「伊那の森連携ミーティング」(
ラーチアンドパイン)の「持続可能な地域づくりと森林」に参加しました。地域の森林を通じて、移住・定住する人を増やすことができる(もちろん簡単ではありませんが)という視点は、共通するものがあって心強かったです。
2025年2月28日
「
太陽光パネルの廃棄・リサイクルのこれから:重要性・課題解決への動きを学ぶ」(
自然エネルギー100%プラットフォーム)をオンラインで傍聴しました。森林との関係では、どういう場合に太陽光発電が地域トラブルになるのか、またそれを防ぐにはどのような手立てがあるのかという研究が参考になりました。
2025年2月25日
山岳圏森林・環境共生学コース、地域協創特別コースの前期日程の試験を受験したみなさん、お疲れさまでした。寒かったでしょう。このあたりでは、今がいちばん寒い時期です。まずは家まで気をつけて。
2025年2月24日
宮崎大学 森林経済学研究室と、
鹿児島大学 森林政策学研究室の、合同論文発表会をオンラインで傍聴しました。両研究室は、年に数回 合同ゼミを開催して交流をはかっています。今回はその成果(卒論・修論)の発表会でした。私たちの研究室と同じ分野ですが、調査している場所が異なるので、また違った視点がありました。信州で似たテーマで調査するなら、どういうものになるか、などを考えながら聞かせてもらいました。
他大学の研究室との合同ゼミは、うらやましいですね。やってみたいことの一つです。
2025年2月23日
「野生動物と社会」学会 青年部会が開催した学習会「野生動物管理における社会科学研究を考える:現場とアカデミアをつなぐには」をオンラインで傍聴しました。野生動物がどう分布しているか、なにを食べているか、などは自然科学の研究ですが、たとえば“野生鳥獣害対策を地域で継続しておこなうには何が必要か”などは社会科学の研究が必要です。どういう方法や理論があるかなど、少し分野は異なりますが、参考になりました。
2025年2月20日
「“保持林業”って何だろう?:人工林の生物多様性を高める方法を探る」(
森づくりフォーラム)をオンラインで傍聴しました。生物多様性の保全のために、たとえば針葉樹人工林の中に生えてくる広葉樹等を、皆伐のときに1haに10本ほど残しておくという方法で、木材生産(経済行為)と両立することを目指したものです。この「保持林業」と、保護区とを組み合わせて保全していくという話でした。
保持林業については
書籍も出ていますし、『
人工林の多様性を高める森づくり事例ガイド』というガイドブックも作成されているそうです。
2025年2月20日
「もりもり上伊那 山の感謝祭」(上伊那山林協会、長野県上伊那地域振興局ほか)に参加しました。地域林業関係功労者が表彰される会なのですが、初めて知る活動も多く、勉強になります(地域を熟知できていないことを反省します)。
2025年2月19日
「拡大するナラ枯れへの取り組みとこれからの広葉樹林管理」(森林総合研究所)をオンラインで傍聴しました。ナラ枯れ(ナラ・カシ類萎凋病)の拡大を予測し、適切な対策時期に効果的な対策をとるための様々な取り組みが報告されました。
ナラ枯れは、信州でもよく話題にのぼります。住宅地・市街地や道路や線路周辺では安全確保のためにも対策をとる必要がありますが、人員も予算も限りがあるので、こうした効果的な対策の意義は高いと感じます。
2025年2月18日
「南信州 元気な森フェスタ」(下伊那山林協会・長野県南信州地域振興局)で、三木が講演「森林を地域の人口維持・増加に活用する」をおこないました。参加いただいたみなさま、ありがとうございます。
2025年2月14日
【紹介】月刊誌『山林』2月号(1689号)の「特定非営利法人に施業を委托する森林所有者の実態」(平山智貴ほか)は、NPO法人が森林所有者から森林の管理や経営を受託している事例を紹介しています。ふつうは森林組合という森林所有者の協同組合が受託することが多いのですが、NPO法人というのは珍しいです。
2025年2月13日
林野庁 中部森林管理局(長野市)で開催された「中部森林・林業交流発表会」に参加しました。国有林の事業を通じて、様々な工夫や技術の応用が試みられています。中部地方のあちこちから広く事例が集まってくる発表会なので、とても参考になります。
2025年2月12日
卒業論文(2日目)の発表会が開催されました。森林政策学研究室からは4人が報告しました(題名は下記)。研究室の3年生も、タイムキーパーやマイク係をしました。
修士論文・卒業論文の発表会は、4年生以外にも重要な機会です。学部3年生にとっては、1年後のイメージをつくるために必須ですし、学部2年生にとっては研究室選びの際の重要なヒントになります。
2025年2月10日
修士論文と卒業論文(1日目)の発表会が開催されました(大学院の環境共生学分野とランドスケープ・プランニング・プログラム、学部の森林・環境共生学コース)。さすが修士課程の学生は、卒論発表や学会発表、審査会と経験を積んでいるだけあって、内容・発表方法ともに洗練されています。
今日は、小さいところでは樹木の遺伝子や化学成分の解明から、大きいところでは洪水時の流木を防ぐ仕掛けや、地形や伝統を考慮した地域再開発計画など、たくさんの発表がおこなわれました。森林・環境共生学分野の幅広さを改めて感じます。卒業論文発表会の2日目は12日です。
2025年2月7日
【紹介】信州大学農学部がある長野県上伊那地方の、森林を使った様々な産業(林業や製材・建築業、木工業、薪、食品・雑貨など)については、情報サイト「
きとくらす上伊那」がとても参考になります(作成は上伊那地域材利活用促進協議会事務局)。業者へのインタビューも載っていて、上伊那という地域の雰囲気がよくわかるようになっています。まだできたばかりのようですが、今後も記事が増えていくでしょう。
2025年2月6日
日本不動産学会の学会誌『日本不動産学会誌』38巻3号の特集「不動産相続登記の義務化をめぐる成果と次の課題」に、三木敦朗・杉本由起・杉本健輔「相続登記だけでは解決しない森林管理問題」が掲載されました。地元のコンサルタントとの共同執筆です。相続登記の義務化で、森林の「所有者」は明確になるかもしれないけれども、それだけでは森林管理の水準が上がるわけではない(下がることもあるかもしれない)という指摘をしました。
2025年2月3日
【紹介】月刊誌『木材情報』1月号(404号)の「国産材製品の輸出拡大に向けた現状と課題を考える」は、ここ10年間で急速に拡大した、日本から外国への木材輸出について、製材会社などが経験を語ったシンポジウム記録です。日本国内むけとは異なる寸法の木材が必要になるだけでなく、海外での用途によっては鋸(のこ)で挽いた跡が残るものが好まれるなど、建築や法律、文化が異なるところへの木材輸出には独特の難しさや工夫があるようです。
2025年2月2日
先週に続いて、「災害時外国人支援サポーター養成講座」(南箕輪村・箕輪町・辰野町)の実践編を受講しました。今回は、「避難してきた日本語を母語としない人たちに、基本的情報やニーズを訊くにはどうしたらよいか」を学びました。通訳ボランティアや、翻訳アプリを通して、避難者役の人に質問してみるという実技もありました。
人々に森林・林業のことを訊ねる(調査する)のには慣れていても、災害時には別の訓練が必要だと痛感しました。避難時に配慮すべき持病があるかを質問しなければ、と考えたところまではよかったのですが、いつも利用している病院があるかを訊き忘れたり。座学に加えて、実習が必要なわけです。
2025年1月31日
今回の「伊那の森連携ミーティング」(
ラーチアンドパインが実施)は、伊那の「野じ庵」の狩猟の話題でした。モンゴルの人々の、家畜で「使わないのは鳴き声だけ」という姿勢に学びながら、食べる肉を狩猟で自給して、革製品を制作しているという話です。
2025年1月28日
【紹介】月刊誌『林業経済』1月号(77巻10号)の、論文「人工林主伐後の再造林実施に影響を与える要因の検討」(藤掛一郎ほか)は、伐採時に提出する伐採届をもとにアンケートを実施し、再造林する所有者と、しない所有者がいるのはなぜか、ということを明らかにしています。所有面積・伐採面積が小さいと再造林しない傾向があることや、伐採業者に再造林を勧められると再造林率が高まること(しかし、業者から再造林についての話を受けなかった所有者も多くいること)、伐採した森林の価格が適当であったかが分からない所有者が6割いることなど、初めて見るデータでした。
2025年1月26日
「災害時外国人支援サポーター養成講座」(南箕輪村・箕輪町・辰野町)の入門編を受講しました。
私たちが森林のことを研究する目的の一つは、災害を減らすことです。山地災害は、森林の状態を改善するとともに、人々が危ないときに適切に避難することで防げます。どちらが欠けても、研究の目的は達成できません。
地域には、日本語を母語としない人たちが住んでいるので、災害が発生したり、リスクが高まっているときには、わかりやすい表現で伝える必要があります。そのために、どういうことに気をつければよいかを学びました。
2025年1月24日
研究室の3年生が、
南箕輪村議会が開催した「若者議会」(模擬議会)で、「議員」として村長に質問をおこないました。
信州大芝高原の村有林に、学生が関わる機会がないが、この森林を高校や大学が連携して学習する場(プラットフォーム)として活用してはどうか。南箕輪村は、村内に保育園から高校・大学まである珍しい村で、信州大芝高原の広大な平地林も珍しい。これを組み合わせて村独自の取り組みをしてはどうか、という提案です。
そのほか、自動車の使用による温室効果ガス排出を、村としてどのように減らそうと考えているかなどについても質問しました。
質問をおこなうにあたっては、研究室のゼミで「何を質問すべきか」「どのように質問すれば、具体的な答弁が得られるか」「質問を通じて、情報を引き出すにはどうしたらよいか」などを議論しました。
「若者議会」の様子は、『長野日報』の記事になっています(
「20~30代の視点で質問 南箕輪村議会が若者議会」)。
2025年1月24日
昨日に続いて、「省力低コスト造林技術普及シンポジウム」(日本森林技術協会)をオンラインで傍聴しました。パネルディスカッションには、長野県からは
南佐久北部森林組合の報告がありました。植林の前には、伐採時に散らばった枝などを片づける作業(地拵え)が必要になりますが、人力でおこなうと とても労力がかかるので、機械でおこなって省力化し、伐採後かならず再造林している事例です(高原野菜の畑の近くは除いて)。
シンポジウムの全体としては、成長の早い苗木を用いて、植林後の草刈り(下刈り)回数を減らす省力化は必要だけれども、それができる場所を選ぶことが大切だという内容でした。植林木以外の草木(競合植生)は、下刈りの回数や、その土地がかつて何に使われていたかなどによっても異なってくるので、観察が必須なようです。
2025年1月23日
「低コスト再造林プロジェクト最終報告会」(全国森林組合連合会)をオンラインで傍聴しました。国産材を安定的に生産していくためには、条件のよいところでは伐採後に植林(再造林)していく必要がありますが、従来は労力やコストがたくさんかかっていました。これを技術的に圧縮して、着実に再造林していくことが課題になっています。長野県からは
根羽村森林組合の報告がありました。成長の早い品種のスギに加えて、早生種のコウヨウザンを植えた事例です。信州のような冷涼で広葉樹が落葉し、シカの生息密度が高い地域でのコウヨウザンの造林例として貴重です。
報告会の全体としては、間伐を繰り返すと再造林がやりにくくなる、という指摘が興味深いものでした。間伐すれば、森林の中(林床)が明るくなって様々な草や低木が生えてくる。これが生物多様性や山地災害防止の点から望ましいとされてきたわけですが、そうすると伐採後にも様々な植物が生えてくることになり、再造林にとっては草刈り(下刈り)などの手間が増える。低コスト再造林したいのなら、伐採の前には林床が暗くて他の草木はない状態にしたほうがいい、ということになりそうです。でも、それはこれまでの森林づくりの方向性とは異なるものになります。それをどう考えるか。面白い点です。
2025年1月22日
農学部構内で、能登半島の大地震・豪雨による森林への影響についての報告を聞きました。地震による山地崩壊には異なる型があって、その後の森林回復の経路にも違いが予想される(埋土種子による天然更新が期待できるところと、そうでないところがある)というのは、森林政策のうえでも重要な指摘だと思います。
2025年1月17日
inadani sees(伊那市産学官連携拠点施設。農学部の隣)で開催された、「伊那の森連携ミーティング」に参加しました。地域の森林・木材関係者が意見交換をする場として、伊那市の事業の一つとして設けられています(
ラーチアンドパインが実施)。私たちも地域のリアルな課題を勉強する機会として大いに活用しています。
今回は、
島崎山林塾企業組合 と、
つなぐ里山 のかたが、事業体の立場から、林業の面白さや課題を語りました。林業についての自らの考えを語る若い人がいるのは、地域の財産です。
2025年1月17日
経済理論学会の学会誌『季刊 経済理論』61巻4号に、三木敦朗「書評 岩佐茂著『マルクスの生活者の思想とアソシエーション』」が掲載されました。
哲学の研究書を、森林・林業研究の視点から論評しました。
2025年1月16日
福島県双葉町の
東日本大震災・原子力災害伝承館で林野庁が展示「福島の森のことを知ろう~森林・林業・森のめぐみと復興~」をしているので見に行きました。
震災遺構・浪江町立請戸小学校や海岸林の造林地も見学しました。
国道6号線を通っていると見えにくいのですが、周囲には今でも帰還困難区域があって、ゲートで封鎖されています。その近傍では生活再建のための除染や工事がおこなわれています。現在のエネルギー構造に依存して生活する私たちが、必ず見ておかねばならない風景だと思います。
2025年1月13日
辰野町で開催された「たつの森の市」に参加しました。昨年つくられた「
未来につなぐ辰野町の森ビジョン」の内容をひろめ、それを実施していくためのイベントです。シンポジウムのほか、食べ物のブースなども出ていました。
森林経営管理法や森林環境譲与税の仕組みができたことで、市町村で「ビジョン」(名前はさまざま)を作る動きがあります。専門家に任せれば「ビジョン」は書けますが、重要なのはその後です。役場や事業者、地域住民・諸団体が、それを実施していかないと意味がありません。どうやって「ビジョン」の内容が当たり前になっていくようにするか。本番はこれからです。
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