森林・環境共生学に関連しそうな本を読んで適当に紹介するコーナー
どこから来たのか どこへ行くのか ゴロウは?
上野千鶴子・Kanyada
徳間書店、2020年
 世間は夏休みということで、やや系統の異なる本の紹介を。
 この本は、映画監督などをしている宮崎吾朗から、著名な社会学者の上野千鶴子が話を聞き出す、という内容である。吾朗さん(と どうしても呼びたくなる)は森林・環境共生学コースの前身である森林工学科の卒業生で、我々の先輩にあたる。
 両親と同じ仕事をしないようにするために、農学部に来て、緑地設計を仕事としたはずの人が、いつのまにか映画をつくっている。その語りを読むと、施工管理という部分では通底しているようで面白い。映画の外(現実)のデザインもする、めずらしい作家のかたちである(※)。
 宮崎駿は、日本があたかも無限に経済成長するかのよう思われていた時期に、それが一時的なものでしかないことを鋭く表現した。これに共鳴して森林分野に来た人も多いはずだ(私もそうである)。しかし現在では、世界や日本の従来のありかたが行き詰まっているのは誰の目にも明らかである。その時代に、子どもにむかって何を描くべきなのか。上野はそう問う。これは確かに、吾朗さんの課題だと思うし、後輩の私たちが実践を通じて示すべきことのようにも思われる。

※ ただし、そのデザインが適切なものかどうかは、検証される必要がある。万博開発の後始末をするようなテーマパークを作るべきだったのだろうか。それは人々を夢の世界に閉じ込め、現実を見ないようにするための装置か、それとも人々の日常(パークの外)での行動を後押しするようなものなのか。先輩の仕事ぶりは如何。
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