森林・環境共生学に関連しそうな本を読んで適当に紹介するコーナー
長野のトリセツ:地図で読み解く初耳秘話
昭文社企画編集室編
昭文社
2021
 やや硬い本が続いたので、今回は易しい本を。
 地図の出版社が発行した解説本である。

 私たちがいる長野県というのは、どういう土地なのだろうか。
 たとえば、市町村数が多い。77もある(平成の大合併前は120あった。北海道に次いで2位)。信大農学部に多い県外出身者が、長野県の市町村名など改めて知る機会はあまりないかもしれない。
 高校生程度の一般向けには、古川貞雄ほか『長野県の歴史 第2版』(山川出版社、2012年)や、市川正夫編『令和版 やさしい長野県の教科書 地理』(しなのき書房、2020年)があるが、「それでも長い、もっと簡単に手っ取り早く知りたい」という人には、この『長野のトリセツ』がいいだろう。これ一冊で、長野県の地理的な特徴や、簡単な歴史を知ることができる。
 農学部に関係のあるところでは、フォッサマグナと中央構造線(両者は別ものですよ)、伊那の景観を特徴づける段丘と田切地形、野辺山の農場・演習林の近くにある野辺山駅(JR最標高駅)や電波天文台、近世にあった馬による運送業「中馬」(ちゅうま)、高原野菜などの高冷地農業などが取り上げられている。
 伊那に根づく昆虫食が、本書のさいごのページにあるのもいい。木曽ヒノキやカラマツ林業のこと、満蒙開拓団のことが書かれていると農学部的にはもっとよかったが、小冊子なので多くは望むまい。

 私たちの学ぶ森林・環境共生学は、林野と人間との関係がどうなるか・どうするかを学ぶ分野である。それはどこでも同じ(一様)ではない。多様な自然条件のなかで、それぞれの土地で、異なるのである。だから、自分が学ぶ場所のことを知っておく必要がある。
 本当は、信州の各地に出かけてそれを体験するのがよい。けれどもなかなか難しい。そういうとき、こういう本も役に立つ。
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