森林・環境共生学に関連しそうな本を読んで適当に紹介するコーナー
改訂版 間伐と目標林型を考える
藤森隆郎
全国林業改良普及協会〔林業改良普及双書〕、2021
 この本は、間伐について、なぜ必要なのか、どのような考えでおこなうのかを短く解説したものだ。
 間伐は、森林を育てる際の中心的な作業である。間伐ができていないことをもって、よく「管理がおこなわれていない森林」などと言われる。温暖化対策でも間伐が必要だとされる。しかし、じゃあどんな間伐でもやればそれで「管理ができた」といえるのだろうか。そんなことはない。意味のない間伐もあるし、有害な間伐もあるのだ。
 森林の状態をはかる指標に、本数密度や相対幹距比、形状比などがある(講義で習う)。この本で重視されているのは、「樹幹長率」(樹高に対する、葉のついている樹冠の割合)だ。樹冠が小さい木は風雪害に弱くなる。かといって、幹の下のほうまで葉(枝)がついていると、木材にしたときに節が多くなって使いづらい。樹幹長率が5~6割程度になるように、木と木の距離を調整する(間伐する)のがよいという。
 では、そういう樹幹長率にするためには、どういうふうに(何年おきに、どのくらい、どんな木を対象に)間伐すればいいのか。「植栽後15年目から、10年ごとに30%くらいずつ間伐すればいいんでしょ(それで補助金が出るし)」ではないのだ。なぜ、何を目標として、そうするのかが説明できないと、現場の地形や土壌の差などにあわせて作業内容をかえることができない。
 もう一つのキーワードは「目標林型」である。最終的に、あるいはその途中の節目ごとに、どのような森林の姿になっていてほしいか。これが考えられていないと、どのような間伐をするのかも決まらない。環境林・(木材)生産林のほかに、生活林という区分も提案されていて、居住地域に近い森林ではこの目標林型がヒントになりそうだ。
 著者は、長伐期施業の意義もとなえる。50年程度で植栽と伐採を繰り返すことは、森林の木材生産以外の機能が未熟な段階を繰り返すということである。また、伐期を長くとれば、育成途中に得られる間伐材の量が多くなり、経営的にも意味があるという。間伐は、たんなる「最終的な収穫までのあいだの管理作業」ではなく、森林から生産物(収入)を得る主要な方法なのである。
 豪雨災害が頻発している状況下で、はたして長伐期でよいのか議論のあるところだが、森林を管理・経営する人が、長伐期化も含めていろいろな選択肢をとれるべきである。基本的なことから確認したい場合に、この本は役に立つだろう。

 この本は旧版(2010年)の改訂版だが、欲を言えばどのあたりをバージョンアップしたのか明記してほしかった。
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